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派遣法改正から3年・あなたの“今”をお聞かせください

お寄せいただいたご相談と弁護士による回答をご紹介します

Q.

弟についての相談です。「労働契約法に基づきまして当社では原則として契約の開始の日から5年を超えて更新しないことにしております。

従いまして、契約は最長でも2019年9月30日までとなります(あるいはそれ以前になるかも知れません)」と通達されました。

2014年10月が最初の契約でしたので、5年満期は2019年となります。

期限が来れば自動的に解雇となるのでしょうか。

回答日:2018/03/07

ご相談の件、会社は、「労働契約法に基づきまして」と通達していますが、労働契約法には、「5年を超えて労働契約を更新してはいけない」などという規定はありません。

会社がいう「労働契約法」の規定は、おそらく労働契約法18条のことを言っているのだと思います。

労働契約法18条は、会社との間の労働契約が有期雇用であったとしても、その契約の更新が何度か行われた結果、雇用期間が通算して5年を超えることになった場合に、その有期雇用で働く人に、会社に対し、契約を無期雇用に転換するよう求めることができる権利があることを定めています。

この規定の意味は、不安定な有期雇用で働いている人であっても、5年を超えて働くことになるような状況なのであれば、より安定した雇用になる無期雇用に契約を転換する権利を認めることで、雇用をより安定させるようにして、有期雇用労働者を保護しようという点にあります。

それに対し、会社は、「労働契約法に基づきまして」と述べていますが、言っていることは労働契約法18条の考え方とは逆で、「無期雇用に転換できる権利を与えない」ために、雇用期間が5年を超える前にクビにしようというものです。それは、「労働契約法に基づきまして」行われるものではなく、「労働契約法18条を潜脱するために」行われるものです。不当な扱いであるといえます。

この会社の方針に対抗するための法的な考え方はとして、労働契約法19条が定める、「雇止め制限」の考え方が考えられます。

労働契約法19条は、たとえ有期雇用であったとしても、「無期契約の雇用と同視できる」、あるいは「今後も当然更新されると期待することに合理的な理由がある」といえる状況だと認められれば、正社員が「解雇」される場合と同様に、期間満了でクビにすることについて、正当といえる理由がなければ、本人が雇用継続を希望する ならば、クビにすることができないことを定めています。

そして、その場合の、「無期契約の雇用と同視できる」、あるいは「今後も当然更新されると期待することに合理的な理由がある」といえる状況にあるといえるかどうかは、

(1)その有期雇用の方が行っている業務が臨時的な仕事ではなく、常にやる必要がある仕事なのかどうか、

(2)契約内容が、会社の正社員の立場に近い内容のものといえるか、正社員と同一あるいは近い労働条件であるか、

(3)最初に採用されるときに、契約期間が満了しても契約は更新されるという説明や、継続を期待させる言動があったかどうか、

(4)契約の更新のときに、厳格な手続をとられることなく、当然のように更新されてきたかどうか、

(5)同じような立場にある有期雇用の同僚が、過去に本人は終了を希望していないにもかかわらず期間満了で終了にされた事実があるかどうか、などの観点から判断されます。

この点、会社は、「5年が上限で終了」とあらかじめ説明しているので、上の(1)〜(5)の点からすれば、会社は、その説明が、(3)や(4)の点で、「5年目以降の更新を期待させるような説明、言動はない」とする根拠にしてくると思います。

しかし、先ほども説明しましたとおり、会社の説明は、「労働契約法に基づきまして」と言っていても、実際には労働契約法18条とは逆のことを言っており、「労働契約法18条を潜脱するために」するものといえます。

そうすると、ひとつの考え方としては、「そのような説明自体が不当なので、そんな説明で契約更新への期待を否定することはできない」と考えることができます。

そうしますと、弟さんが実際に働いている状況からして、上に挙げた(1)〜(5)のうちほかの点から見て、契約が更新され続けることを期待する理由が十分にあるといえるならば、5年の期間に達したとしても、労働契約法19条により、会社は弟さんをクビにすることはできないという結論になる可能性があります。

そして、労働契約法19条により、会社が弟さんをクビにすることができず、その結果、契約期間が通算5年を超えることになるならば、今度は労働契約法18条により、弟さんは無期雇用への転換を会社に求めることも可能になります。

弟さんの状況を、法的に説明すると以上のとおりです。労働契約法19条や、労働契約法18条で救済される可能性があるか否かは、まず上に挙げた(1)〜(5)の観点から、契約が更新され続けることを期待する理由が十分にあるといえるか否かを検討する必要があります。その検討は、労働事件に詳しい弁護士に、直接面談で相談していただき行うのがよいと思います。

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