相談と回答「健康診断の受診が有期雇用は交通費自費・有給扱い。この区別に問題は?」|派遣法改正から3年・あなたの“今”をお聞かせください|派遣労働者の皆様へのアンケート
派遣法改正から3年・あなたの“今”をお聞かせください

お寄せいただいたご相談と弁護士による回答をご紹介します

Q.

健康診断の休暇および交通費について、現在の派遣会社では、無期雇用(派遣元の正社員)は交通費支給・業務扱いで法定の健康診断を受診できますが、有期雇用の社員は交通費自費・有給扱いでの受診となっています。

この区別は問題無いものなのでしょうか?

回答日:2018/01/27

1 厚生労働省の通達では、労働安全衛生法で事業者に労働者の一般健康診断の実施義務を課していることから、健康診断の受診に際して、事業主が指定した病院までの交通費については、事業者が負担すべきものとされています。

また、同通達には、一般健康診断の受診に要した時間についての賃金支払について、当然には事業者の負担すべきものではなく、労使協議で定めるべきものであるが、労働者の健康の確保は、事業の円滑な運営に不可欠な条件であることを考えると、受診に要した時間を欠勤扱いにして、その分の賃金カットをするのではなく、賃金を支払うことが望ましいとされています。

したがって、あなたの派遣元が無期雇用の社員(以下「無期社員」といいます。)の健康診断につき交通費を負担し、受診に要した時間に対し、業務扱いとして賃金を支給していることは上記通達の趣旨に沿ったもので適切なものであるといえます。

2 一方で、派遣元があなたのような有期雇用の社員(以下「有期社員」といいます。)に対しては、健康診断を受診しても、交通費が支払われず、受診に要した時間を一方的に有給扱いにしてしまっており、あなたが疑問を持たれている無期社員との間で「区別」が生じています。

そこで、この「区別」に対し、有期社員と無期社員の「労働条件」の「相違」は、職務の内容等の事情を考慮して、有期社員にとって「不合理」と認められるものであってはならないと定める労働契約法20条が適用されるかどうかが問題になります。

(1)まず、厚生労働省の通達によれば、「労働条件」は、賃金や労働時間等の狭義の労働条件のみならず、災害補償、服務規律、教育訓練、付随義務、福利厚生等の一切の待遇を包含する広義のものであるとされています。

健康診断は、「福利厚生」に関する労働条件であり、健康診断の受診するためには、実際には病院までの交通費がかかり、受診のための時間を要しますから、健康診断の受診のために必然的に生じる交通費の支給や受診に要する時間を業務扱いにするかどうかも「福利厚生」に関する一切の待遇に含まれるものと考えます。

それにもかかわらず、派遣元があなたのような有期社員については、交通費を支給せず、一方的に有給扱いにしてしまうことは、上記通達の趣旨に反するだけでなく、労働契約法20条の「労働条件」に関して「相違」が生じているといえます。

(2)次に、この「労働条件」の「相違」が「不合理」と認められるか否かですが、無期社員と有期社員の業務の内容、業務に伴う責任の程度、配置変更の範囲等の事情を踏まえて判断されることになります。

無期社員とあなたのような有期社員の間には、派遣先での業務内容に相違がないということですので、業務内容に伴う責任の制度、派遣先での配置転換の範囲も変わらないような場合には、あなたの質問した「区別」は「不合理」な「相違」であるとして、交通費や賃金の請求が認められる可能性が高くなります。

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