相談と回答「サービス残業を強要されます。泣き寝入りが現状でしょうか?」|派遣法改正から3年・あなたの“今”をお聞かせください|派遣労働者の皆様へのアンケート
派遣法改正から3年・あなたの“今”をお聞かせください

お寄せいただいたご相談と弁護士による回答をご紹介します

Q.

派遣で時給なのに派遣先にサービス残業を強要されています。

パワハラは労働局に言っても、何かしてくれるわけでもないようです。皆様も泣き寝入りの現状でしょうか?

ユニオンに入るのも雇い手としては敬遠すると思うのですが…

回答日:2018/10/16

まず、派遣先に強要されてサービス残業を受け入れてしまったとのことですが、例え労働者の同意があったとしても、サービス残業は違法です。

サービス残業時間の証明ができるようであれば、今からでも未払残業代を請求することが可能です。タイムカードや出退勤の記録など、残業時間が分かるような証拠は残っていますか?PCを使った業務に従事している場合、PCのアクセスログも証拠になる可能性がありますし、他にも入館用のICカードの記録など、様々な証拠がありえますので、何か証拠になりそうなものがないか探してみてください。

賃金請求の時効は2年で、時間が経つにつれて古いものからどんどん時効で請求権が消滅してしまいます。未払残業代を請求するのであれば、早めに動くことをお勧めします。パワハラについては、ご指摘の通り労働基準監督署ではあまり対応してもらえないことが多いようです。

これは労働基準監督署が、労働基準法という法律に関する監督を行う役所で、労働基準法違反(賃金の支払いや残業、休日に関する事項など)については指導をしたり、悪質な場合には刑事事件にすることもあるのですが、それ以外については強制的な権限がないという理由によるものです。もっとも、労働基準法違反に伴ってパワハラがあったのであれば、労働基準監督署が対応してくれる可能性はあります。

相談者様の場合、質問からはパワハラの具体的な内容が分かりませんが、サービス残業を強要する際にパワハラ的な言動があったのであれば、賃金未払いの労働基準法違反の一環として、労働基準監督署が相談に乗ってくれるかもしれません。また「総合労働相談」といって、労働基準法違反に限らず、労働問題全般の相談を受け付けてくれる窓口もありますし、労働局のあっせん(話合いで労働紛争を解決する手続)を利用するという方法もあります。

もっともこの方法は、労働基準法違反の場合と異なり、労働基準監督署や労働局が使用者に対して何か(例えばパワハラに対する謝罪など)を強制する権限はありません。そのため、この相談やあっせんによって問題が解決できる保証はありません。そのためできれば1度、弁護士にご相談されることをお勧めします。未払いの残業代を請求できるか、どの程度の証拠があるのか、パワハラについては実際にどのようなことをされたのか、その行為がパワハラに該当するのか、解決方法としてはどのような手段を選択すべきかなど、具体的な事情をお聴きした方が適切なアドバイスができると思います。

お近くの弁護士をご紹介することも可能です。最後に、労働組合への加入についてですが、確かに労働組合に加入していることを理由に敬遠されることがないとは言えません。残念ながら、日本の企業経営者の一部に、労働組合を嫌悪する人たちが一定数存在するのは事実です。しかし、労働者が1人で会社と戦うことが難しいときに、一番の味方になってくれるのは労働組合です。

弁護士は、何か問題があったときに、事後的に手助けをする(例えば、残業代請求や解雇無効の裁判をするなど)ことはできますが、労働条件の改善を求めたり、働き続けながら会社に対して交渉事をするならば、弁護士よりも労働組合の方が適任です。なぜならば労働組合法という法律で、使用者は労働組合から労働者の待遇や労働条件に関する団体交渉を申し入れられた場合、正当な理由がない限り拒むことができないとされているからです。

また、労働者が労働組合員であることを理由に不利益な取り扱いをすることも違法とされていますので、万が一不利益な取り扱いをされた場合には、各県に設置された労働委員会に救済を求めることもできます。このように労働組合は法律上、強い権利が認められ、使用者による攻撃からも保護されています。

何か困ったことがあったときには、労働組合への相談も選択肢として考えてみてください。もし心当たりの労働組合がない場合には、弁護士からその地域の労働組合をご紹介することもできると思います。この点についてもどうぞご遠慮なくご相談ください。

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