相談と回答「直接雇用の打診があるも時給が下がる。メリットが見当たりません…」|派遣法改正から3年・あなたの“今”をお聞かせください|派遣労働者の皆様へのアンケート
派遣法改正から3年・あなたの“今”をお聞かせください

お寄せいただいたご相談と弁護士による回答をご紹介します

Q.

同じ派遣先に勤務して10年以上になります。今回の改正により、派遣先より直接雇用(半年更新のパート契約・時給制)の打診がありました。

しかし、派遣の時給と直接雇用された場合の時給が200円ほど安くなります。働き方改革の「同一労働同一賃金」には、こういった場合は適応されないのでしょうか。

派遣であっても直接雇用されても仕事内容は変わりません。むしろ派遣でなくなったのならと、今までやらなくていいことも直接雇用されたらやらなくてはいけなくなる可能性もあります。

仕事内容が変わるわけではないのに、時給が安くなる、ということに納得がいかないのです。

直接雇用といっても半年契約ですし、直接雇用されるメリットが見当たりません。

回答日:2018/10/02

2018年6月29日、国会で働き方改革法案が成立し、雇用形態にかかわらない公正な待遇の確保のために、パートタイム労働法、労働者派遣法などの法律が改正され、不合理な待遇差の解消をはかるための規定の整備がはかられました。

しかし、この改正で不合理な待遇差の解消がはかられているのは、有期雇用労働者、パートタイム労働者と同一企業内の正規雇用労働者(無期雇用フルタイム労働者)との間、派遣労働者の場合は派遣先の労働者との間のものです。(なお、この規定は、2020年4月1日から施行されます(中小企業の場合は2021年4月1日から施行されます))。

ご相談にある、派遣先に直接雇用された場合に時給が200円下がる、という派遣労働者が派遣先と直接雇用になる場合の労働条件の差については、働き方改革法案では対象とはなっていません。

派遣先に直接雇用される場合の労働条件についてですが、平成24年の派遣法改正で設けられた違法派遣における労働契約申込みなし制度にあたる場合であれば、派遣先が派遣労働者に対し、派遣元における労働条件と同一の労働条件を内容とする労働契約の申込をしたとみなされますが、そのような場合でなく任意に派遣先が派遣労働者に直接雇用を申込む場合については、特段の規制がなされておらず、使用者と労働者との交渉により決するということになります。

相談者様の場合、半年更新のパート契約・時給制とありますので待遇改善をはかるとすれば、直接雇用先の正規雇用労働者との待遇差を問題にすることが考えられます。

今回成立した働き方改革法は施行がまだ先ですので、現時点では、労働契約法20条、パートタイム労働法8条、9条の適用が考えられます。相談者様のケースで、仮に派遣先をA社としますと、相談者様が派遣先A社に直接雇用されたとして、A社の正規雇用労働者とA社の有期雇用労働者である相談者様の賃金等の労働条件の違いが、不合理かどうかということになります。

A社の正規雇用労働者と比較して、[1]労働者の業務の内容及び当該業務に伴う責任の程度(職務の内容)、[2]当該職務の内容及び配置の変更の範囲、[3]その他の事情を考慮したとしても、賃金や手当などの労働条件の格差が不合理だと評価される場合は、違法と判断されます。

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