相談と回答「派遣からパートに。契約で気をつけることは?」|派遣法改正から3年・あなたの“今”をお聞かせください|派遣労働者の皆様へのアンケート
派遣法改正から3年・あなたの“今”をお聞かせください

お寄せいただいたご相談と弁護士による回答をご紹介します

Q.

11月で3年の抵触日を迎えます。職場では派遣を来年までに整理し、新入社員を入れることを決定、私も切られる対象でしたが、上司に恵まれたこともあり、パート社員の枠で働けることになりました。

社員を目指して働き続けたいですが、1年契約になります。切られる不安あります。

パート契約直接雇用するにあたって気をつけた方がいい契約はありますか?

回答日:2018/08/29

1.前提として、パートタイム労働法の適用の有無をチェック会社によっては、有期契約者全体を「パート労働」と呼称している場合もあるので、前提として、あなたの勤務する当該会社の「パート社員の枠」での契約が、「短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律」(以下、「パートタイム労働法」と略称します。)の適用対象になるものかどうかを注意してください。

パートタイム労働法が適用になる「短時間労働者」とは、「一週間の所定労働時間が同一の事業所に雇用される通常の労働者(当該事業所に雇用される通常の労働者と同種の業務に従事する当該事業所に雇用される労働者にあっては、厚生労働省令で定める場合を除き、当該労働者と同種の業務に従事する当該通常の労働者)の一週間の所定労働時間に比し短い労働者をいう。」と定義されています(同法2条)。したがって、通常の労働者に比べて一週間の所定労働時間が短いかどうかを見ることになります。

以下においては、あなたが締結する契約がこの定義に照らしてパートタイム労働法の適用対象になる場合であることを前提として回答します。

2.契約内容のチェック
パート形態での直接雇用契約を結ぼうとする場合には、当然、労働条件等を中心として、どのような契約内容となっているかについて十分確認した上で契約締結をする必要があります。

パート労働契約においては、パートタイム労働法の適用があるのは当然ですが、パート契約でかつ有期契約である場合、労働契約法18条(無期転換権)、同19条(有期雇用法理)及び同20条(有期契約を理由とする不合理な労働条件の禁止)の適用もあります。

(1)契約期間に上限が定められていないかどうかをチェック
労働契約法18条は、無期転換権を規定したものです。使用者の中には、5年を超えて更新した場合に無期転換されることを回避しようとして、契約に際して予め、例えば「更新の上限は5年以内とする」旨の特約や、「そもそも契約を更新しない(例えば、1年限りとする等)」旨のいわゆる「不更新条項」を契約書に盛り込もうとする場合もあります。

あなたが契約するに際して、このような条項を入れることを求められた場合は、このような条項を入れない契約書にするように強く求めてください。

但し、場合によっては、立場上、どうしてもこのような条項を入れることを拒否できないこともあるかもしれません。(契約打ち切りが間近にかに迫った労働者としては、とりあえず契約されることのメリットを考えて、不更新条項に同意したいという心理になることは十分考えられることです。)その場合においても、最低限、このような条項に対して「異議を留めてサインした」ことが明らかになるような措置(契約書にその旨追記したり、別の覚書を書いたり、あるいは異議を留めている旨を録音するなど)をとっておく必要があります。いずれにせよ、このような事態になったときは、信頼できる労働組合や労働弁護士に相談して、このような条項を入れさせないようにしてください。

(2)賃金などの労働条件が通常の労働者と比べて差別されていないかどうかをチェック
1) 短時間労働者の待遇の原則まず、パートタイム労働法の第8条は「事業主が、その雇用する短時間労働者の待遇を、当該事業所に雇用される通常の労働者の待遇と相違するものとする場合においては、当該待遇の相違は、当該短時間労働者及び通常の労働者の業務の内容及び当該業務に伴う責任の程度(以下「職務の内容」という。)、当該職務の内容及び配置の変更の範囲その他の事情を考慮して、不合理と認められるものであってはならない。」と規定していますので、あなたが担当する職務の内容に照らして、通常の労働者との間で不合理な格差が設けられていないかをチェックする必要があります。

そして不合理な格差がある場合には契約に先立って是正を求めたいところです。必要に応じて、信頼できる労働組合や労働弁護士に相談してください。

2) 通常の労働者と同視すべき短時間労働者に対する差別的取扱いの禁止
また、パートタイム労働法の第9条は、「事業主は、職務の内容が当該事業所に雇用される通常の労働者と同一の短時間労働者(第十一条第一項において「職務内容同一短時間労働者」という。)であって、当該事業所における慣行その他の事情からみて、当該事業主との雇用関係が終了するまでの全期間において、その職務の内容及び配置が当該通常の労働者の職務の内容及び配置の変更の範囲と同一の範囲で変更されると見込まれるもの(次条及び同項において「通常の労働者と同視すべき短時間労働者」という。)については、短時間労働者であることを理由として、賃金の決定、教育訓練の実施、福利厚生施設の利用その他の待遇について、差別的取扱いをしてはならない。」と規定しています。

したがって、あなたがこの「通常の労働者と同視すべき短時間労働者」に該当する場合、会社は、短時間労働者であることを理由として、賃金の決定、教育訓練の実施、福利厚生施設の利用その他の待遇について、差別的取扱いを禁止されていますので、このような差別的内容になっていないかどうかをチェックする必要があります。

禁止された差別に当たる場合には契約に先立って是正を求めたいところです。この場合も、必要に応じて、信頼できる労働組合や労働弁護士に相談してください。

3) 期間の定めがあることによる不合理な労働条件の禁止
更に、労働契約法第20条は、「有期労働契約を締結している労働者の労働契約の内容である労働条件が、期間の定めがあることにより同一の使用者と期間の定めのない労働契約を締結している労働者の労働契約の内容である労働条件と相違する場合においては、当該労働条件の相違は、労働者の業務の内容及び当該業務に伴う責任の程度(以下この条において「職務の内容」という。)、当該職務の内容及び配置の変更の範囲その他の事情を考慮して、不合理と認められるものであってはならない。」と規定していますので、有期契約を理由として不合理な差別がなされていないかをチェックする必要があります。

これについても不合理な差別に該当する場合は是正を求めたいです。この場合も、必要に応じて、信頼できる労働組合や労働弁護士に相談してください。

3.「働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律」の成立による関係条文の改正に注意
いわゆる「働き方改革関連法案」が可決成立したことにより、上記に述べたパートタイム労働法及び労働契約法の一部が改正されています。この部分についての施行日は、大企業については2020年4月となっています。

その改正の内容は、上記の労働契約法20条は削除され、パートタイム労働法8条が、「(不合理な待遇の禁止) 事業主は、その雇用する短時間・有期雇用労働者の基本給、賞与その他の待遇のそれぞれについて、当該待遇に対応する通常の労働者の待遇との間において、当該短時間労働者・有期雇用労働者及び通常の労働者の業務の内容及び当該業務に伴う責任の程度(以下「職務の内容」という。)、当該職務の内容及び配置の変更の範囲その他の事情のうち、当該待遇の性質及び当該待遇を行う目的に照らして適切と認められるものを考慮して、不合理と認められる相違を設けてはならない。」と改正され、また、パートタイム労働法の第9条が「(通常の労働者と同視すべき短時間・有期雇用労働者に対する差別的取扱いの禁止) 事業主は、職務の内容が通常の労働者と同一の短時間・有期雇用労働者であって、当該事業所における慣行その他の事情からみて、当該事業主との雇用関係が終了するまでの全期間において、その職務の内容及び配置が当該通常の労働者の職務の内容及び配置の変更の範囲と同一の範囲で変更されると見込まれるものについては、短時間・有期雇用労働者であることを理由として、基本給、賞与その他の待遇のそれぞれについて、差別的取扱いをしてはならない。」と改正されています。

結局、労働契約法とパートタイム労働法が統合されていますので、改正法施行後は、これらの条文に照らして不合理な相違ないし禁じられた差別がないかどうかを検討することになります。あなたのばあい、この改正法が適用されるのはちょっと先のことになりますが、一応ご留意ください。

» 「寄せられた質問と回答」一覧へ戻る

» HOMEへ戻る