相談と回答「10月で雇い止め。すぐに失業給付を受けたいのですが…?」|派遣法改正から3年・あなたの“今”をお聞かせください|派遣労働者の皆様へのアンケート
派遣法改正から3年・あなたの“今”をお聞かせください

お寄せいただいたご相談と弁護士による回答をご紹介します

Q.

2018年10月31日が抵触日ですが、5月になって10月末で終了と告げられました。理由は予算がないとのことです。

法律によって契約が終了となるのであれば、せめて失業給付をすぐに受けたいです。派遣会社に伝えたところ、他の派遣先がきっと見つかるので自己都合扱いとなり、3ヶ月の待機期間が発生すると言われました。

これは不可能なのでしょうか?

回答日:2018/08/08

1 退職理由の種別により生じる各種差異について
会社をどのような理由で退職することになったか、その辞め方あるいは辞めさせられ方によって、いつから受給できるか(3か月の給付制限の有無)、いくら受給できるか(受給金額)、或いはいつまで受給できるか(受給期間)に関して、概略、次に述べるような違いが生じます。

まず、前提として、退職理由による種類を整理すると次のとおりです。会社都合で退職した場合は、(1)「特定受給資格者」となります。

一方、自己都合の場合、(2)「自己都合退職者」(一般受給資格者)と(3)「特定理由離職者」に分けられます。この内、特定理由離職者とは、特定の理由(正当な理由)があって退職したものと認められる場合であり、「特定理由離職者1・2」の2種類があります。

これらの違いによりどのような差異が生じるかを見ますと、まず、「自己都合退職」の場合は、雇用保険の手続きをした後に3か月待たないと失業給付を受け取ることができませんが、「特定受給資格者」と「特定理由離職者」については、3ヶ月の給付制限はなく、すぐに受け取ることができます。

また、「特定受給資格者」と「特定理由離職者1」については、所定給付日数も優遇されています(後述する、「労働契約期間が満了し、かつ次の更新がないことにより退職(更新を希望したが更新できなかった場合)した」と認められる場合には、「特定理由離職者1」に該当します)。

このように「特定受給資格者」や「特定理由離職者1」が優遇される理由は、これらの場合、会社を辞める準備ができないままに仕事を失ったという場合といえるからです。

これに対して、自己都合退職の場合は、自分で退職日を決めて、あらかじめ準備をした上で会社を辞めることができるとの想定から、失業保険の支給内容に差が設けられているものです。

参考までに、それぞれの根拠条文を挙げると、特定受給資格者の定義については雇用保険法23条2項に規定されており、特定理由離職者の定義については同法13条3項に規定されています。

そして、雇用保険法附則4条は、暫定措置として、雇用保険法13条3項の特定理由離職者であつて、受給資格に係る離職の日が平成21年3月31日から平成34年3月31日までの間であるものに係る基本手当の支給については、当該特定理由離職者を特定受給資格者とみなす旨規定しています。

2 特定受給資格者及び特定理由離職者の判断基準について
この特定受給資格者あるいは特定理由離職者にどのような場合に該当するか、という点については、厚労省が示している「特定受給資格者及び特定理由離職者の範囲と判断基準」を参照するのが便宜です。

(1)特定受給資格者の判断基準
有期雇用契約の場合に関して、この判断基準がどのような場合に「特定受給資格者」に該当すると規定しているかというと、この基準の「特定受有資格者の範囲」の II に、「(7)期間の定めのある労働契約の更新によリ3年以上引き続き雇用されるに至った場合において当該労働契約が更新されないこととなったことにより離職した者」及び「(8)期間の定めのある労働契約の締結に際し当該労働契約が更新されることが明示された場合において当該労働契約が更新されないこととなったことにより離職した者(上記(7)に該当する者を除く)」と規定しています。

より具体的には、この(7)に当たる場合とは、期間の定めがある労働契約が更新され、雇用された時点から継続して3年以上雇用されている場合であり、かつ、労働契約の更新を労働者が希望していたにもかかわらず、契約更新がなされなかった場合に離職した場合がこれに該当するとされています。

また、この(8)に当たる場合とは、期間の定めのある労働契約の締結に際し、当該契約の更新又は延長を行う旨が雇入通知書等により明示されている場合(労使で契約を更新又は延長することについて確約がある場合)であり、かつ、労働契約の更新を労働者が希望していたにもかかわらず、契約更新がなされなかった場合に離職した場合が該当するとされています。

なお、労働契約において、契約更新条項が「契約を更新する場合がある」とされている場合など、契約更新に条件が付されているときは、ここでいう契約更新の明示(契約更新の確約)があるとは言えず、この基準に該当しないとされています。

(2)特定理由離職者の判断基準
また、有期雇用契約の場合に関して、この判断基準がどのような場合に「特定理由離職者」に該当すると規定しているかというと、この基準の「特定理由離職者の範囲」の I に、「期間の定めのある労働契約の期間が満了し、かつ、当該労働契約の更新がないことにより離職した者(その者が当該更新を希望したにもかかわらず、当該更新についての合意が成立するに至らなかった場合に限る)(上記「特定受 給資格者の範囲」の II の(7)又は(8)に該当する場合を除く)(※)

(※)労働契約において、契約更新条項が「契約を更新する場合がある」とされている場合など、契約の更新について明示はあるが契約更新の確約まではない場合がこの基準に該当します」と規定しています。

より具体的には、期間の定めのある労働契約について、当該労働契約の更新又は延長があることは明示されているが更新又は延長することの確約まではない場合(すなわち、労働契約において、「契約を更新する(しない)場合がある」、「○○○の場合は契約を更新する」など、契約の更新について明示はあるが、契約更新の確約まではない場合)であって、かつ、労働者本人が契約期間満了日までに当該契約の更新又は延長を申し出たにもかかわらず、当該労働契約が更新又は延長されずに離職した場合にはこれに該当するとされています。

なお、労働契約において、当初から契約の更新がないことが明示されている場合(すなわち、労働契約において、「契約の更新なし」など、更新がない旨が明示されている場合)は、基本的にはこの基準に該当しないとされています。

3 ご相談者の場合
結論からいいますと、ご相談様の場合、今回の雇用契約終了の前までに、ご相談様が契約を更新しない旨を伝えていないにもかかわらず、現在の派遣元がとの雇用契約終了の前までに派遣元から次の派遣先の紹介をせず、雇用期間が満了して雇用契約が終了した場合、がないか、もしくは派遣元との雇用契約書に記載された、次回更新に向けた意思表示の期間までに、ご相談様から契約を更新しない旨を派遣元に伝えられた場合など派遣元との雇用契約が契約期間満了で終了した場合は、上記の「特定理由離職者1」に該当すると判断されるものと思われます。

また、今回の雇用契約終了の前までに、ご相談様が契約を更新しない旨を伝えていないにもかかわらず、派遣元からすぐに離職票をもらわれても、待機期間なしで失業給付が受けられるかと思います(特定理由離職者)。

さらに、派遣元との契約期間満了による終了の場合に、派遣元から雇用契約を更新しない旨の通知があった場合に、ご相談様の方から更新を希望する意思表示をされた上で契約が終了した場合や派遣元との雇用契約の途中で派遣元からの契約打ち切り通知があった場合は、会社都合による離職として「待機期間だけでなく失業給付期間の点でも有利になります(特定受給資格者))に該当すると判断されるものと思われます。

特定受給資格者又は特定理由離職者に該当するかどうかの判断は、受給資格に係る離職理由により、公共職業安定所が行うものであり、離職理由の判定は、「(1)事業主が主張する離職理由を離職証明書の離職理由欄((7)欄)により把握した後、 離職者が主張する離職理由を離職票-2 の離職理由欄((7)欄)により把握することによって、両者の主張を 把握するのみならず、(2)その際にはそれぞれの主張を確認できる資料による事実確認を行った上で、最終的 に安定所等において慎重に行います」(前記「判断基準」)とされています。

いずれにしましても、派遣切りの場合の失業給付については、ネット上で誤った情報が散見されたり、厚生労働省なども統一的な情報提供を行っていないことから、ご相談様の住所地を管轄するハローワークで、十分に実情を説明された上で、適切なアドバイスを受けてください。

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