相談と回答「部署が変われば同じ企業で働けるのでは?」|派遣法改正から3年・あなたの“今”をお聞かせください|派遣労働者の皆様へのアンケート
派遣法改正から3年・あなたの“今”をお聞かせください

お寄せいただいたご相談と弁護士による回答をご紹介します

Q.

100%子会社の派遣会社に登録して2016年8月まで働いておりましたが、会社が存続できないとの理由で親会社であるX社という派遣会社に全員転籍(?)となりました。

X社との雇用期間は1年4か月です。X社では、3年ルールで同じ企業には勤められないと聞きました。

ですが、部署が変われば、同じ企業で働けるのではないでしょうか?

回答日:2018/03/13

同じ派遣会社に雇用され、同じ派遣先企業でも働き続けられる可能性はあります。

[制度の説明]
まず、あなたのような派遣労働者の派遣労働期間の制限について、2015年に改正された派遣法は、2つの規制を設けています。

(1)派遣労働者個人単位の期間制限
(2)事業所単位の期間制限

あなたのご質問に直接関係しそうな、(1)派遣労働者個人単位の期間制限について説明します。

これは、一人の派遣労働者が派遣先の同じ組織内の業務につけるのは3年まで、というルールのことをいいます。あなたのご質問にあった「3年ルール」とは、このことを念頭に置いていると思われます。

 

同じ組織内の業務かどうかは、一応、いわゆる「課」や「グループ」など(一般に「係」よりも大きい単位)が異なるかどうかがひとつの目安として考えられています。

もっとも、同じ組織内の業務かどうかは、「課」や「グループ」などの名称にとらわれず、業務としての類似性や関連性と、組織長の業務配分や労務管理上の指揮監督権限を考慮して実質的に判断されます。

例えば、派遣先がある派遣労働者Aさんを3年間、ある事業所の営業1課で使用した後、営業2課という名称だが、業務内容などは全く同じ課で引き続きAさんを派遣労働者として受け入れた場合、形の上では別の「課」ではあるものの、業務内容は全く同じであり、実質的にみれば同じ組織単位に所属していることとなります。

したがって、この例では、労働者個人単位の期間制限に違反するということになり、Aさんは営業2課の派遣社員として働くことはできないということになります。

もっとも、同じ組織内かどうかは、部署などの名称にかかわらず、上記の様に業務内容等により実質的に判断されることになりますので、同じ企業で派遣労働者として働けるかどうかはこれらの事情により変わりうる、ということになります。

[ウチの会社だけ適用がないという独自ルールはある?]
「X社は、3年ルールで同じ企業には勤められないと聞きました」という点ついても説明します。

先ほど説明した(1)派遣労働者個人単位の期間制限は、派遣法で定められているものです。「ウチの会社には適用がない」という「独自ルール」はあり得ません。どの会社でも一律に適用されます。

ですから、X社がどういった態度でも、派遣法にしたがい、部署が変われば同じ組織内の業務といえず、同じ企業で派遣労働者として働くことができる可能性がありますので、ご安心ください。

[どこから3年を数えるのか?(起算点)]
以前の子会社から、X社へ転籍されたとのことで、3年の期間制限が、いつから数えて3年なのかという点についても説明します。

「転籍」とは、元の企業(今回は100%子会社の派遣会社)との労働契約が終了して、新たに他の企業(今回はX社)との契約関係に入ることをいいます。このような「転籍」によりあなたを雇用する派遣会社に変更があった場合でも、3年の期間制限は、派遣会社ではなく派遣先に着目します。

ですから、派遣会社の変更は考慮せず、同じ派遣先へ派遣されている期間を数えることになります。

I:100%子会社の派遣会社と転籍後とでは派遣先に変更がなかった場合改正法が適用される2015年9月30日以降で、最初の契約に基づいて派遣された日(おそらく子会社との契約)から数えて3年ということになります。

II:転籍で派遣先に派遣先の変更があった場合転籍があった2016年8月以降で、最初に締結した契約に基づいて現在の派遣先に派遣された日から数えて3年ということになります。両者で、期間制限の抵触日が異なるので、ご注意下さい。

[部署異動がなかった場合]
とはいえ、仮に部署異動をしてもらえなかった場合、派遣会社はあなたを3年を超えて同じ派遣先には派遣することはできないのが原則です。

もっとも、派遣会社とあなたの契約が3年で終了するわけでもなければ、3年を超えて締結することが妨げられるわけでもありません。新しい派遣先での就労の途が閉ざされたわけではないことはご留意下さい。

また、あなたが3年間同じ派遣先に派遣されていて、継続して働くことを希望している場合には、雇用安定化措置の対象となり、雇用が確保できる可能性もあります。

詳しくは、『ここが知りたい! 改正派遣法Q&A』Q03-3(P.8以下)をご覧下さい。

http://www.hiseiki.jp/file/hakenhouqanda-1607.pdf 具体的には、派遣会社を通じて、派遣先に対してあなたを(派遣社員ではなく)直接雇用をするように依頼することなども可能です。

また、派遣元に対して、期間の定めのない無期の派遣労働者として雇用するよう申し入れることも可能です。無期雇用の派遣労働者となると、前記の個人単位の期間制限も事業所単位の期間制限も適用されなくなるので、部署移動がなくても同じ派遣先で3年をこえて働き続けられる可能性があります。

そして、X社が、自社だけこの雇用安定化措置を免れるという独自ルールを主張することもできません。ただ、派遣先や派遣元がこの依頼を拒否する自由もあるので、依頼の仕方などに工夫が必要ですし、期間制限を迎える少し前に予め働きかける必要もあります。

また、無期雇用となったとしても、派遣元よりも派遣先の方が力関係が強い場合も多く、派遣先が継続を希望しない場合、同じ派遣先で働き続けることは難しくなります。

ですから、雇用安定化措置を求めたい場合には、どのような措置を求めるかなども含め、ぜひあらためてご相談いただき、詳しい事情をお聞かせください。

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